船橋駅で財布を拾って届けてくれた方へ
所用があり辻堂まで行った。雨予報だったが綺麗に晴れた朝だった。船橋駅から1時間半、電車に揺られ辻堂に降りた時財布がどこにもないことに気づいた。発狂しそうに焦る気持ちを抑えてそのまま改札口に直行し、乗ってた電車での忘れ物を探してもらう。
どこらへんの車両ですか?
座っていたのは進行方向右側ですか?左側ですか?
何も覚えてないが、とりあえずうろ覚えの記憶を頼りに回答する。当然見つかる訳はない。見つかったら電話してもらうようお願いし、来た道を逆にたどる。歩いてきた(と思われる)ルートに祈るような気持ちでじっと目を凝らし、ホームの枯葉に財布の幻影を見ながら。あれだけいつも身近にあった財布がもうどこにもないのだと思えず、階段から目を上げた時に、電車に乗ったその時に、人混みの中に、ふとした瞬間に見つかるのではないかとずっと考えながら、家路を急ぐ。
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家を出た時から財布をカバンから取り出してないので、家にある可能性もあるのだ。そんな僅かな希望を胸に抱いて歩いていると、本当に家に忘れてきたような気がして、なあんだ、あったあったっていう未来しか想像できない。楽観的未来に縋り付かざるを得ない。
家に着き、小物置き、玄関、着替えた場所、トイレ、風呂、嫁のタンス、ありえそうな場所、ありえない場所、あらゆるところを探してやっぱり家にはないと気づいた時、心拍数は急激に上がる。今まで縋り付いてきた楽観に背を向けられ、絶望的な現実を突きつけられる。カード、カード、カード、現金15000円、再発行できるか怪しい中国のキャッシュカード(貯金が凍結するということだ)、免許証(末番が1になるということだ)。
とりあえず、警察に届けようと震える手で船橋警察署に電話をかける。
家から駅に歩く間にポケットから落ちた可能性もある。時間や場所を詳しく説明する。
○○○○ さんですね?
はいそうです。
届いてますよ。本人確認必要ですので取りに来てください。
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あるのだ、本当にこんな話が。
いるのだ、道端に落ちてた財布を拾って、わざわざ2キロも離れた警察署に届けてくれる人が。土曜の晴れた朝、予定もあるだろう中でわざわざ届けてくれた人はどんな方だろう。
お礼がしたいと言ったが警官の若い女性はふと笑ってそういうのは大丈夫ですのでと言った。
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なのでせめて、ここでお礼を言わせて下さい。誰も読まないネットの片隅に存在するこんなブログだけれども、ひょんな事から善良なあなたの目に入る事もあるかもしれません。ありがとうございました。あなたのおかげで私は本当に救われました。