ちば日記

生まれも育ちも会社も千葉。生粋の千葉県民です。

同じ財布をずっと使い続けるということ

この財布を買ってから12年が経った。その頃はナイロンの財布しか持っておらず、皮に憧れてしょっちゅう、「革財布 一生物」や「革財布 経年変化」などと検索していて、使い込まれた財布の写真など見て一人胸を熱くさせたものだ。

 

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herzのド定番二つ折り革財布 WS-5(キャメル) 2007年購入当時は9500円


その中でもよく出てきたのがherzの二つ折り財布だった。とにかく頑丈で、革の経年変化が楽しめて、一生物です、しかも安いと、その情報に心躍らせながら青山のTOM DICK&HARRYに足を運び、二つ折り財布WS-5を買ったのであった。WS-5の売り場にはスタッフが一年使ったサンプルが置いてあり、色が濃くなり艶が増したそのキャメルの財布をいつまでも撫でていたいと思った。

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買ってからしばらくはもう財布を眺めてはデレデレしていた。革に詳しい友達からおでこの脂を塗るといいと言われておでこに財布をスリスリし、かすかに艶が増すとそれを飽くことなく眺めたものだ。

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かすかにHERZの文字が見える。

山に登るにも自転車で旅行するにも海外を放浪するときにもその財布はポケットの中にあった。汗や雨で革の光沢は鈍くなり、タイでカヌーに乗っていた時は海に落として塩水を吸ってぶくぶくになった。それでも干して乾かししばらく使っていると元どおりの光沢を取り戻す。

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いつのまにか、財布のことは一切気にしなくなっていた。毎日毎日ただただ使い続けてたまに思い出したようにオイルを塗った。数年使った頃、眼鏡屋で会計する時に店員さんが俺の財布を見て言った。herzの財布ですよね。俺は10年使って糸切れちゃって買い直したけど、修理すれば一緒使えますよ。

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使って10年が経つ頃やはり糸が切れ、もう見た目も割とみすぼらしくなっており買い替えを考えた。いろんなサイトや店を訪れ、新品の革財布を見て心を躍らせたが、実際買うには至らなかった。結局新品の財布を買っても10年後には同じようにボロボロになるのだ。それであればこの財布を労って使い続けた方がいいじゃないかと。

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大体皆買いかえなと言うが、革小物大好きな友人はオイルが足りないと言った。


糸の修理代はherzの渋谷本店で1000円足らずでやってくれた。糸が新しくなって気持ちいい。久しぶりに財布にオイルを塗ると、財布は鈍い光沢で答えた。

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物に愛着が強すぎる人は結局物を買い換えることが多い。数々の記事を見て一体何回「一生物」を買いかえてるんだ、と思うことは多い。気持ちはわかる。愛しすぎると、その物の不満な点や、もっといいもの、もっと「一生使えそうな物」が目に入りどうしても買い替えたくなってしまう。

一つの物を一番長く使い続けるのは物に無頓着な人だ。俺だって、毎日おでこをスリスリするほど財布を愛していたらとっくにココマイスターの「一生物」の財布(ブライドルレザー)に買い替えていたに違いない。

10年も同じ財布を愛し続けられない。でも何気なしに使っていて気づいたら10年、20年と使っている。そうやって使われ続けた物はなんでも、メーカーやブランドや価格の高低問わず美しい。