ちば日記

生まれも育ちも会社も千葉。生粋の千葉県民です。

アームストロングの静けさが心に残る ファースト・マン

 冒頭からすごい。軍用機に乗ったアームストロングはバーティカルクライムで準成層圏へ到達し、自由落下し無重力状態へ、大気圏に突入しようとするも大気に跳ね返され機体の高度はぐんぐん上昇する。何とか大気圏に再突入しモハーベ砂漠へ着陸。機内の振動や、窓の外の青い地球、そして乱高下する高度計をこれでもかと見せつけられ、観客は最初から息もつけない展開に慄然とする。

ファースト・マン (字幕版)

ファースト・マン (字幕版)

 

 本作品は人類で初めて月を歩いた二ール・アームストロングの話である。序盤、NASAにて行われる座学にて月が以下に遠い場所かが黒板上に示される。当時大気圏外で周回軌道して離着陸することしか達成していなかった人類にとって、月に行くなんて狂気の沙汰であった。

 本映画では、月へ行くアポロ計画の任務の過酷さと、幼い娘を失くした私生活の静かさが言葉少なく、しかし丹念に描かれる。冒頭の軍用機のシーンから、ジェミニ8号の打ち上げ、命を失いかけたジェミニ制御不能事件まで、視点は全てコックピットの中にある。凡百のSF映画の追随を許さない圧倒的な迫力、臨場感がそこにはある。しかし映画を見終えた後に心に残るのは何とも言えない静けさだ。人類で初めて辿り着いたその場所で彼が何を感じたのか。ヘルメット越しにその表情は見えない。それは本人にしかわからない。

 ミスが重なり、税金の無駄遣いだと叩かれ、ロシアに先は越され、という散々な状況の中で焦り浮ついているように見えるNASAの中、アームストロングは坦々と任務をこなす。不治の病に冒された娘を救う方法はないかと夜な夜な勉強した結果を丹念にノートにまとめるアームストロング、絶対絶命のスピンの中冷静さを保ち続けたアームストロング、平静を保つことすら難しいそんな状況下で解決策をひたすら模索し続けるその姿勢が人類初の偉業達成に繋がったのだろう。

 支える妻の鬼嫁っぷりも必見。ピンチの時にラジオ回線を勝手に切られたからとNASAに駆け付け職員に繋ぎ直せと怒鳴りつける。月へ発つ前日、子供に何も言わず出て行こうとするアームストロングに自分の言葉でちゃんと説明しろと突き付ける。帰って来れない可能性があるんだろうと。

ここまで芯が強い人じゃないと月に行く夫は支えきれないんだろう。